加藤一二三氏の餌やりトラブル裁判を傍聴して
(※2010.5.13の判決を受け、野良猫の被害を減らすための活動についてまったく前情報のない人にもわかりやすくなるよう、緑字箇所を追記。また、傍聴記事についてもより詳しく追記しました。2010.5.14 byゆきももこ)

【地域猫活動とは】
飼い主のいない猫による苦情やトラブルを、地域全体の問題として解決に取り組む手段のひとつ。
不妊去勢と適切な餌付け、清掃を行い、生きている猫の生命を脅かすことなく、緩やかに数を減らしていく活動。
猫の把握と管理を適切に行い、不妊手術を徹底するためには餌付けは欠かせない。
行政による猫の殺処分軽減と猫によるトラブル回避のために現在最も有効とされる取り組みで、東京都を初め、行政が推奨している。
ただしこの活動は、猫嫌いの人にも猫に無関心の人にも無責任餌やりの人にも協力をしてもらわないと成り立たない。

【TNR活動とは】
地域住民の無関心や非協力者の妨害などで地域猫活動が困難な場合などに、主にボランティアが、無責任餌やりに適切な餌やりや清掃などの指導を行いつつ、主にボランティアの個人負担で不妊手術を行い、元の場所に戻すこと。(参照:のらねこ学入門「TNRとは」

地域猫活動に及ばずも、ボランティアが仲介に入り、実際に猫が減ることで、苦情を言う人が納得し見守ってくれるようになる場合も多い。
ただ、TNR活動の欠点は、活動を世間にアピールできないこと(=理解を得られないこと)
頑なな反対派(猫嫌いの人や不妊手術反対の無責任餌やりなど)の攻撃を恐れ、人知れずこっそりとTNRだけを行っている個人ボラの数のほうが多いこと(→上記の「主にボランティアが、無責任餌やりに適切な餌やりや清掃などの指導を行いつつ、」がなされず、根本的解決に結びついていかない)

これらの欠点は、推奨しているはずの行政が、反対派を説得してくれないこと、ボラを守ってくれないことが大きく影響しています。

【野良猫の苦情やトラブルに対する対応(東京都の場合)】
ほとんどの区が、不妊去勢手術の助成金を設けたりとTNR活動を推奨している。
苦情への説明でも、猫を排除したり餌付け禁止を強制するようなことはしない。
実行動は都の動物愛護推進員や地元のボランティアに依頼。
子猫を産ませたいため不妊手術に反対、捕獲の為だろうと不妊手術済であろうととにかく餌付けに反対、ボラが介入すること自体目障りだと反対、など、TNR活動に非協力・妨害をする人がいた場合は、地域猫活動やTNR活動の説明をし協力を求めるという程度の指導は行うが、行政にはそれ以上の権限はなく、担当者も年度毎に移動したりなどで定着しないため、効果的に説得・指導できる知識も乏しい場合が多く、したがってその対応は今一つ期待できず、困った時はボランティアに丸投げなのが現状です。

ちなみに、区によって不妊手術の助成金が設けられてはいますが、全額ではないため、活動にかかる費用は多くのボランティアの自腹や、善意の方の寄付で行われています。
餌付けしている人が手術費用くらい出すべきと思いますが、「自分の猫ではない」と言ってビタ一文出さない身勝手な無責任餌やりも多数存在します。
もちろん、善良な相談者は費用を負担してくれます。






3日、加藤一二三元将棋名人が、外猫の餌やりをめぐるトラブルで、近隣住民から訴えられた件の裁判の傍聴に行ってきました。

あいにくの悪天候でしたが、98席ある傍聴席はいっぱいになり、中に入れない人もたくさんいました。
呼びかけで来てくださった皆様、お礼を申し上げます。


中央線の遅れが影響して、13時開始の予定が、13時30分開始でした。

証言台に立つのは、被告(加藤氏)側証人として、東京都の動物愛護推進員のNさん、加藤氏本人、原告側の証人は、加藤氏の並び奥にお住まいのHさん、加藤氏の住むマンションの理事会会長で隣人のSさん、の4名です。


感想は後にして、とりあえず、傍聴してわかったことだけを書きます。
ちゃんとすべて書き留めたわけではないので大雑把になりますが、ニュアンス的にはほぼ実際通りにお伝え出来ると思います。


まず、被告側証人に、動物愛護推進員のNさんが証言台に立ちました。
Nさんは、今回の件で、「猫のトラブル」について精通している人に、「地域猫活動」などについて説明をしてもらいたいとの、弁護士からの依頼を受けての証言になります。

被告側弁護士からN村さんへの質問は、
「猫のボランティアの活動について」「猫のトラブル時の対応について」「地域猫の方法と効果について」「猫の行動範囲、テリトリー、繁殖能力、その他習性について」
などがあり、Nさんから、一般にわかりにくい「地域猫活動」や「猫トラブルを減らすためにすべきこと」などが説明されました。

そして、「加藤さんの行いについてどう思うか」「こういったケースで裁判になることをどう思うか?」との質問に

Nさん「行いは妥当で評価すべきだと思います。」
「たった2匹の猫でこのような裁判になるのは普通では考えられません。」

との答えでした。

また、Nさんは、原告が提出した「猫の糞」の写真について、
「何枚も出されているが、同じ糞を色んな角度から撮ったものが重複しているので、糞の数は写真の数の半分もないと思う。また、猫の糞ではないものも見受けられる。」
と証言されました。

そして、Nさんが現地の視察に行った際、
「問題の住宅敷地内での糞尿の臭いはまったくと言って良いほど感ぜず、近所への聞き込みの結果、迷惑という方はほとんどいなかった。」
と、証言されました。


次に、原告側弁護士から、Nさんへの質問。

裁判と言うのはそういったものなのだと思いますが、原告側弁護士の質問は、被告側弁護士からの質問に答えたN村さんの発言を確認するような形の質問になります。


「あなたは盛んに猫を知っているような言い方をしているがどれだけ知ってるのか?」
「あなたは盛んに野良猫対策として『地域猫活動』が有効だと言っているがどれだけ有効なのか?」
「原告の証拠として出した糞の写真が猫のものではないとどうしてわかるのか?」
「あなたはマンションの管理規約よりも地域猫活動が大事と思っているのか?」
「あなたは管理規約は守らなくても良いと思っているのか?」
「あなたに問題の猫を保護しろと依頼が来たら保護するか?」

など。
これら、動揺を狙ったかのような失礼な言い回しの質問に対しても、Nさんは冷静かつ的確な返答をされていました。

「猫の生態については一般の人よりも知っていると思います。日々活動する上でたくさんの猫と接しますので。何百匹単位です。」
「地域猫活動は、地域の協力があれば数年で確実に猫が減ります。実際にそういった事例が何件もあります。」
「猫は糞をする場所にもこだわりがあります。その写真の糞は、猫が糞をする場所とはとても思えません。おそらく散歩の犬が入ってしたのではと思います。」
「管理規約を守らなくて良いとも、それより地域猫活動が大事だとも私は言っておりません。」
「猫の保護は緊急性がある場合以外は行いません。すべての猫を保護できませんので、その場所で人と共存して生きていけるように指導いたしております。」



また、原告側弁護士からは、
「地域猫地域猫と言うが、それは公園などの話でしょう!」
「集合住宅で地域猫が認められているところが東京都にあるんですか?」

という、無知丸出しの質問もありました。
地域猫活動は住宅街でも行われますし、公団など、元の規約がペット不可のところでも、地域猫認定となっているケースはたくさんありますので、Nさんはそのように答えました。


次に、
原告側の証人、Hさん(加藤氏の奥の住人)、Sさん(理事長で加藤氏の隣人)が、それぞれ順番に、原告側弁護士と被告側弁護士からの質問を受け、答えました。

これもすべて書き取れず、おおざっぱに書きます。

原告側の証人の方たちは、特別意地悪そうでもない普通の方でした。
面白い事に、自ら原告側に不利と思われる証言がたくさん出ましたが、被告側弁護士の誘導などでうっかり出たという感じではなく、受け答えは淀みなくきっぱりしていました。

原告側弁護士の質問により引き出された原告側の主張は、

「猫が居ついて困る。」「加藤さんの通路に5~6匹たむろしているのを見た。」「加藤さんが別のアパートの前で猫に餌をあげているのを見た。」「自分の(庭の)通路に猫がいて、加藤さんの庭に入っていった。」「猫は4匹いる。」「加藤さんの庭に猫の寝箱が置いてある。」「規約はペット不可だ。」
「庭が猫の糞や嘔吐物で汚される」「明け方、庭で猫が糞をしているのを見た。」「同じ糞の写真が何枚もあるのは、同じ糞が何時間も放置されている証拠とするために撮ったものだ。」「加藤さんから、自分の敷地内の糞の掃除をしてもらったことはない。」「毛やハエ、カラスの害もある。」「臭いがひどいので家ではお香を焚いている。」「糞の掃除を今まで100回はやった。」「時間をかけて我慢していたが改善がないので裁判に踏み切った。」「加藤さんは三鷹市からも餌やり禁止の指導を何度も受けているのに改善していない。」など。

そして、「一番言いたい事は?」との質問に

「管理規約をとにかく守って欲しい。」

との答えでした。

次に、被告側弁護士とSさんとHさんの答弁。

「猫の数は以前と比べて増えたのですか?」
「いえ、猫の数は今は減りました。」

「猫の数は減った…では糞の数は増えたのですか?」
「ここ数年で糞の害も減った。今はそんなでもない。」

「マンション通路で猫を見かけると言いましたが、それは加藤さんが餌付けしている猫なのですか?」
「野良猫は加藤さんが餌付けしている猫以外にも何匹かいるのでわからない。」

「猫が専用箇所に入るのを防ぐ工夫はされたのですか?」
「自分の専用通路に猫の進入を防ぐ対策は過去も現在も一度も何もしていない。猫除けの工夫は何もしていない。」

「匂い対策でお香を焚くと言いましたが、それはいつから焚いているのですか?」
「お香はいただいた物が良い香りで評判が良かったので日頃から焚いていた。特に来客時は焚いている。」
「では、猫の匂い対策としてだけ焚いているわけではないのですね?」
「はい、好きな匂いなので。」

など。。。

その他にも
「共同通路の糞はほとんどなくなった」「加藤さんと事前に話し合いなど何もしていない」「加藤さんに代替提案をしたことはない」「猫が死ねば良いとは思わない」「地域猫活動という言葉は知らなかった」「今は地域猫という言葉は聞いている」「猫に餌をあげないようにしても猫はとまこかよそへ移動すればそれで良い」(この答弁は、自分さえ良ければ他の人が迷惑を被ろうがどうでも良いという身勝手発言なので、傍聴席一同から失笑が上がりました。)

といった感じで、原告側弁護士との答弁で主張していたこととほとんど食い違う内容でした。

そして、「どうして話し合いや代替提案をしなかったのですか?」との問いに、
「話し合いなんてならない!猫のことだけでなく、以前からいろいろ人間関係のこと(対立)があった。」

具体的には

「管理組合の役員をやらない。総会に出ない。」
「家族を侮辱された」

などをあげましたが、それらのトラブルの詳細は語られませんでした。


最後に、加藤氏本人が証言台に立ちました。
加藤氏は、元からの性格らしいのですが、やや興奮気味で、弁護士や裁判官が抑えるのも聞かず、話が長くなる傾向がありました。

加藤氏の主張は、
「最初、庭に来た猫に餌をあげたら次の年に子猫を生んで、18匹になった。」
「これではいけないと思い、捕獲を人に頼んで不妊手術を施した。手術費用は95パーセント出した。」
「三鷹市からは、その当時に不妊手術の助成を嘆願する署名を集めて提出した。」
「三鷹市はそれ(不妊の助成)は時期尚早だから無理だが、加藤さんのところの猫はどうぞそのまま餌をあげてくださいと言われた。」
「猫は生き物だから餌をあげることを途中でやめることなどできない。」
「庭の寝箱は猫の身体を気遣ってのことだ。」
「命あるものを大事にしてどうしていけないのか。」
「総会に仕事で出られない時に委任状を出す行為を非難される謂れはない。」
「総会前に他の住民から猫の事で苦情を言われたことはない。」
「他の住民の専用敷地に猫の糞がされているのは知らなかった。誰も言わなかった。」
など。

原告側弁護士から、加藤氏への突っ込みとも言える質問。

「あなたは、猫達の不妊手術をされたと言いましたが、実際にしたのは近所のO氏で、お金も言われてしぶしぶやっと出したそうですね?」
「あなたは三鷹市に嘆願書を出す運動をしたと言いましたが、集めただけですね?」
「(証拠写真を出して)これはあなたの家の窓ですが、室内に猫が写っていますね。あなたは猫を室内でも飼っているのですか?」

など。

これに対し、加藤氏は、
「私は(猫を)捕まえられないから、(捕るのは)O氏に頼んで、お金は95パーセント出した。」
「署名は集めた。それを愛護団体がまとめて議員に提出した。」
「猫は飼っていない。それはなんの写真かわからない。私には猫には見えない。」(この答弁には原告側弁護士は苦笑いしながら「嘘言ってもらっちゃ困るな~」とつぶやきを漏らしました。)



大盤に差し掛かって、裁判官が注意したにも関わらず、加藤氏が大きく主張しました。

「これは、猫にかこつけたイジメだと思っています!」
「(マンションに)30年住んでいて、過去にコリーを飼っていた人もいたのにその時は誰も何も言わなかった!コリーみたいな大型犬がいて誰も気が付かなかったと言うのか!」



ここで、原告側から「嘘だ!」との声が上がりましたが、別の原告からは「もう引っ越した!大きくならないコリーだ!」「犬は室内で飼っていた!」などと声が上がり、こちらもまた裁判官に諌められました。

そして、裁判官から、原告側に

「どういうこと?管理規約で動物だめなんじゃないの?加藤さんだけだめなの?室内で飼ってれば良いってことなの?そこのとこはっきりさせてよ。そんな話初めて聞きましたよ。」と、お叱りがあり、原告側は口ごもるという場面がありました。



大体以上で終わりです。
終了は16時45分。約3時間の長い裁判になりました。

次は結審になりますが、その前に一度、裁判官が現地視察に来てくれるそうです。
(これは異例なことだそうです。)


***************


私の感想は、中立でと思いますが、きっと加藤さん寄りになってしまいますね^^;
証人に立った愛護推進員のNさんは、私のボラ師匠ですし。

けれど、少しの私情を入れて、できるだけ中立で感想を述べさせていただけるなら、
この騒動は案の定、猫を口実にしたくだらない意地の張り合い、人間関係のもつれ、といった印象でした。


加藤さん自身はたぶん、人との交流が不得手で誤解されやすい方なのでしょう。
「変人」として有名な方だそうですし、それは裁判中の様子を見ても感じました。
(私からすれば微笑ましい程度でしたが)


それを面白くないと思った一部の住民が、他の住民を焚き付けて、猫を口実に加藤氏を追い出そうとしているというように感じました。
加藤さんも、最初に総会で言われた時に、穏便に済むように頭を下げれば良かったのでは?と思いました。
けれど、(おそらく)それをやらなかった。
話し合いももちろんどちらからもやろうとしなかった。
どっちもどっちと言われても仕方ないかもしれません。


けれどいくら変人でも憎くても、それと猫の餌付けは関係ありません。



原告側・被告側で意見が分かれた、
「猫の数」「三鷹市の対応」「加藤氏が猫を飼っているかどうか」「加藤氏が手術をしたのか」について。

私には真実はわかりません。
「猫の数」はともかくとして、他はかなり重要ポイントになるのではと思います。

けれど、被告側、原告側で、共通ではっきりと
「猫のことではない、人間関係の問題だ」
「総会で議題に上がる以前に、双方で話合いはなかった」
と証言されていましたし、

原告側は
「猫の数は以前より減った」
「猫の糞の数は減った」
と、認めています。

原告側一番の主張(強み)は、管理規約のことだと思いましたが、それも、『みだりに迷惑を及ぼすような行為は禁止』といった内容で、明確に「敷地内で動物に一切えさをあげてはいけない」というものではないので、規約規約と声高に言えたものではないはずだと私は思うのです。

しかも、その規約は、加藤さんがいつも仕事で参加できずに委任状を出すと知っていながら、事前に何の声懸けもなく、加藤さん不在の総会で一方的に決められた規約です。
加藤さんへの苦情は、2年前の総会からで、次の総会にはもういきなり「規約を守らないなら餌やりをやめるか出て行け」だったそうです。


過去にもっと猫の数が多かった時には一度も苦情を言わず、猫の数が減り、糞害もほとんどなくなったと原告自らが証言している今の状況で、裁判沙汰とは。。。
どう中立に立とうにも、加藤氏への悪感情から来る悪意のある行為だと感じました。

猫を口実にしたイジメとしたら、人として情けない限りです。

もしそうなら、
三鷹市の対応がどうであろうが、加藤氏が猫を飼っていようが、加藤氏が手術をしていなかろうが、あまり関係ないように感じます。

人間同士のトラブルに猫が巻き込まれた。

ということです。

餌付けを禁止しても、何の解決にもなりません。



結審の結果はまた報告できたらと思います。


*******************************

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